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非可燃性ナトリウムイオン電池のAlsym Energy、Juniper Energyと提携してカリフォルニア州に500MWhの蓄電システムを展開へ
非可燃性かつ高性能なナトリウムイオン電池の開発を手掛けるAlsym Energyは、2026年5月12日、米国カリフォルニア州を拠点とする再生可能エネルギー開発企業Juniper Energyと戦略的パートナーシップを締結し、合計500MWh規模の同社「Na-Series」ナトリウムイオン蓄電システム(BESS)をカリフォルニア州内で展開すると発表しました。両社にとって本提携の中核となるのは、モハーベ砂漠をはじめとする高温地域での蓄電所建設であり、リチウムイオン電池が直面してきた熱関連の運用課題を、根本的に異なる電池化学で乗り越えることを狙いとしています。さらにJuniper EnergyはAlsymが米国製の電池サプライヤーであることを活用し、米国の投資税額控除(ITC)や米国エネルギー省(DOE)のインセンティブの最大化を計画しており、税制優遇とプロジェクトIRR(内部収益率)の双方を底上げする戦略を描いています。
技術面で本提携が際立つ理由は、Alsym Energyが提供するNa-Seriesの熱特性にあります。Alsym Energy共同創業者兼CEOのMukesh Chatterは、「ナトリウムイオン電池は周囲温度50度まで快適に動作するが、カリフォルニア州やテキサス州のような暑い地域では、気温が43度付近に達するとリン酸鉄リチウム(LFP)系システムを停止せざるを得なくなる」と説明しています。Na-Seriesはセル設計の段階で熱暴走を回避するように設計されており、能動冷却(アクティブクーリング)なしでパッシブ冷却のみで稼働可能なため、HVAC設備や火災抑制インフラへの追加投資を大幅に削減でき、プロジェクトの初期費用と長期保守コストの双方を引き下げます。Juniper Energy創業者兼マネージングパートナーのKeith McDanielsは、「非リチウム領域を数年かけて評価した結果、ナトリウムイオン、特にAlsymのNa-Seriesがカリフォルニア州の次世代グリッドにとって最良の解であることが明確になった」と述べ、米国製・非可燃性・税制適格という3点が同社の意思決定を後押ししたとしています。
Na-Seriesの公開仕様は、エネルギー密度135 Wh/kgおよび250 Wh/L、動作温度範囲はマイナス40度から60度、10,000サイクル超(約20年の運用寿命)、充放電レート2C~4C、ラウンドトリップ効率95%超とされており、リン酸鉄リチウムを下回る重量エネルギー密度を、安全性・運用温度範囲・サイクル寿命で補完する位置づけです。釘刺し試験では満充電状態でも破裂・発火・炎が観測されず、加速速度熱量計(ARC)試験では室温から400度まで加熱しても熱暴走に至らないという安全性も示されています。Alsym Energyはこれらの技術を、物理モデルと自律実験、独自の分子診断を組み合わせた「Physics-informed AIプラットフォーム」を用いて開発しており、化学組成の特定から試作・スケーリングまでを従来比10倍の速度で進めることを可能にしています。本Juniper Energyとの提携は、2026年4月30日に発表されたESS Tech, Inc.との8.5GWh規模のナトリウムイオンセル・モジュール供給LOI(基本合意)に続く商業展開の第二弾でもあり、Alsym Energyがデータセンター・産業施設・系統用蓄電を含む幅広い用途で米国製の非リチウム蓄電を本格展開するフェーズに入ったことを示しています。
Alsym Energyについて
Alsym Energyは、2015年にMukesh Chatter、Kripa Varanasi(マサチューセッツ工科大学教授)、Rahul Mukherjeeらによってマサチューセッツ州ウォーバーンで設立された米国発のディープテック電池スタートアップで、現在はマサチューセッツ州モールデンに約5,600平方メートル(60,000平方フィート)の新本社を構えています。同社はリチウムやコバルトを使用しない、非可燃性・非毒性・低コストのナトリウムイオン充電池の開発・製造を手掛けており、主力製品の「Na-Series」は、データセンター、産業施設、商業不動産、住宅、マイクログリッド、鉱業、海運、防衛、公益事業用グリッドなど、幅広い定置用蓄電用途を対象としています。電池開発には独自の「Physics-informed AIプラットフォーム」を活用し、材料探索・セル設計・製造プロセスを閉ループで最適化することで、商業化可能な化学組成の発見を従来比10倍に高速化しているのが特徴です。これまでに累計約1億1,000万ドルを調達しており、2024年2月にはTata Limited(インド・タタグループ)とGeneral Catalystがリードする7,800万ドルのシリーズCラウンドを実施し、Thrive Capital、Thomvest、Drads Capitalも参加しました。OEMや蓄電インテグレーターとのグローバルなパートナーシップを通じて事業を拡大しており、最近ではESS Tech, Inc.との8.5GWh規模の戦略的提携や、本件のJuniper Energyとの500MWhの提携など、北米市場における商業展開を加速させています。
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